パイワン族(排湾族)
パイワン(排湾族)は人口8万2千人あまりで、台湾南部の屏東県全域のほか台東県の南部に居住している。もっとも人口が多いのが屏東県来義郷で、その他瑪家郷、三地門郷、泰武郷、春日郷、獅子郷、牡丹郷のほか、台東県の大武郷と太麻里郷などに散在している。日本時代の分類ではルカイとプユマが含まれる場合もあり、緊密な親戚関係にある人々も多い。
パイワンは伝統的には厳格な社会階級制度があり、頭目、貴族、勇士および平民といった四階級に分けられている。頭目は世襲制で一番目に生まれた子が男女を問わず継承権をもち、頭目だけに許された名前を名乗る。社会的地位は名前によって見わけられるが、最近の傾向としては頭目や貴族を自称する人々が増えている。以前は頭目や貴族だけが特権的に華麗な衣装を身につけていたが、一般の平民も許されるようになっているため、以前よりも階級差が目立たなくなっている。伝統的にはスレートでつくった石造りの家に住み、祖霊の物語や家の起源を貴族は家の前面に彫刻し、平民は衣服の織り方や刺繍で表現した。現在は鉄筋コンクリート造りの家に住んでいる人々が多いが、ひと眼でパイワンであるとわかる彫刻や絵が描かれていることが印象的だ。
文責:山本芳美