プユマ族(卑南族)

 プユマ(卑南族)は、主に台湾東海岸の台東県に10集落にわかれて住んでいる。伝説では、先祖が石から産まれた知本と竹から産まれたとする南王の2系統に大きく分けられている。現在の人口は1万人あまり。台湾原住民の総人口のおよそ2.4%にあたる6番目に大きな民族となっている。

 行政的には「平地原住民族」となっていることが示すように、漢民族やアミ族と混住している集落がほとんどである。この関係で閩南語や日本語、英語、プユマ語など複数語をあやつる人々が多い。プユマ語は急速に失われつつあるが、反面、長老たちを中心に母語教育に熱心に取り組んでいる。婿入り婚(「養子を取る」と南王の住民は日本語で表現する)から嫁入り婚に徐々に移行してきたが、現在でも長女の意見に重みがあり、家族内の地位も高い。男性は12歳に達すると加入式を経て高床式の男性集会所に寝泊まりし、集会所で寝食をともにして訓練を受けた。年かさの男性と擬制的な親子関係を結び、父親のように慕ってさまざまなことを教えてもらうほか、義理の父親が人手を必要とするときには率先して手伝うことが期待された。年長の男性は、何名の若者とそうした関係を結んだかによって人物的な評価が定まった。除草祭、海祭、收穫祭のほか、12月には猴祭と大狩猟祭がおこなわれる。シャーマニズムは現在も継続していて、祭礼の前や中ほど、終了にかならずシャーマンによる儀礼がおこなわれる。

文責:山本芳美