タオ(達悟族)は、台湾原住民のなかで唯一島嶼部の蘭嶼に住む民族集団。ヤミ(雅美族)とも呼ばれる。蘭嶼には台東から飛行機で約30分、フェリーでは緑島経由で約2時間半かかる。人口は3千名あまりで、島内に6つの集落がある。島に住んでいることと生活全般にわたるタブーが多かったため、原住民族のなかでもっとも文化的な独自性が保たれている。毎年4月から7月にかけて飛魚祭が行われるなど、漁労や造船にかかわる風習が多く見られる。特にチヌリクランには念入りな文様がほどこされ、船の完成時にはにぎやかに進水祭が行われる。男たちは独特の表情と身ぶりで威嚇し、悪霊(アニト)をはらう。
以前は裸島と呼ばれただけあって、男性は籐などでつくられた兜とベスト、ふんどし姿で、正式な場では円錐形の金属製の兜と悪魔避けの刀を身につける。女性は腰巻きに貝でつくられた首飾りを着用していた。しかし、現在では伝統的な服装は、祭礼の時に見られるのみである。非常に平和な民で、首狩りの習慣をもっていなかった。
文責:山本芳美